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40前の赤木と南郷さんの小ネタを書いてみました。

 老眼鏡を掛けて新聞を読んでいると、赤木に笑われた。
「わはは、なんだあんたそれは」
「老眼鏡だよ」
「南郷さん、目が悪くなったの?」
「そりゃあ、年だからな」
「あんた、それ十年前から言ってるじゃねえか、年だからなって」
 赤木は膝に鼠除けで餌をやっている野良猫を乗せて、座椅子にもたれて南郷を眺めている。
「そういやお前、最近いやによく帰ってくるなあ」
「ああ、俺さ、引退したから」
「いんたい?なにをだ?」
 南郷は老眼鏡を外すと、目をしばしばさせて、赤木に振り返った。赤木はちょっと考える気色で、猫を手放した。派手なスーツが抜け毛で酷いことになっている。こりゃどっちも洗わんとなぁ。
「うーんと、代打ち?裏の請け負いをやめたんだ」
「そうかあ、そりゃあ、よかった」
「それだけか」
 なんだ、なんて言って欲しかったんだ?と聞くと、なんか、もっと喜ぶか驚くか、困るか怒るかすると思った、と言って、目元をごしごしした。猫がするりと離れていく。
「いまさらお前のすることに、いちいち驚かんよ」
「そりゃそうかもね」
「それで、これからどうするんだ?」
「べつに。いままでと変わらないよ。ただ俺が一番じゃなくなるってのと、直接打つことはなくなるってだけ」
「そうか」
「いろいろ、ふらふらして、日本中見てみようと思うよ」
 どこにでも雀荘はあるし、しのげるさ。そう言って赤木は煙草に火をつけて、のんびり吸い出した。
「前に札幌に行ったとき、楽しかっただろ?あんな風に二人でもいいし、一人でもいいし……沖縄も行ってみたいなあ。俺行ったことねえんだ」
「その前に引退祝いをしよう。ケーキでも買ってきてやるよ」
 いらねえよ、誕生会でもあるめえし。言いながら赤木は、まんざらでもないようだった。

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